2005.10.29 (Sat) ON SALE!
鳴瀬喜博ソロアルバム「Simple Song Simple Night」NARU-5 2,500yen (Tax in)

(アルバム解説)

鳴瀬喜博ことナルチョが2004年に発表した17年振りのソロ・アルバム『WINDOW』の驚 きは未だ記憶に新しい。久々に届けられた音源はいとおしんで聴かれ、発表に伴って 行われた久々のソロ・ライブには多くの人々が足を運び、皆、至福の時を楽しんだ。 そして今年、新たな驚きが届けられた。

『Simple Song Simple Night』。

昨年の『WINDOW』に続く新しいソロ・アルバム。それは、単に新譜を聴く事が出来る という喜びだけでなく、「ナルチョは本格的なソロ活動を再開した…?!」という前作 での期待を確信へと進める、嬉しい知らせでもあった。そんな素敵な予感に満ちた今 回のソロ・アルバムは、全編ほぼ歌モノの、カバー集。

「前回の『WINDOW』が終わった後から次のソロを作る気でいて、前と違う形にしよう と思いながらも、その形が見えなくて。前回のエレクトリック・アコースティック・ ベースの流れは大切にしたくて、でも、アコースティック・ベースをボトムじゃなく て、ギター的なところに置いてやってみたいと思ってたんだ。それが今年の1月にヒ ダノ修一セッション、その後に須藤満とやったベース・デュオ、これでリズムのカッ ティングをやれる明かりがかなり見えた。そして2月に1曲デモを録ったんだけど、前 のアルバムと同じ流れで、これは違うなと思って。そんな時、3月に是方のバースディ・ ライブがあって、青木タイセイや加藤明美とやる事になって。明美に合った歌を探し ているうちに何曲かカバーが出て来て、この形でやってみようかなと。昔から自分の アルバムにカバーは入れてたけど、カバー・アルバムは作りたいとずーっと思ってた しね。<鳴瀬>」

漠然とした「作りたい」という気持ちを持ったまま模索している中、出会った色々な 出来事が化学変化の様にソロ・ワークへ影響を与えて行ったようだ。

「前回はカシオペアでの俺の曲を人にアレンジして欲しくて福田裕彦に手伝って貰っ たんだけど、だから今回は全部自分でやろうとか、自分で作りたかったとかそういう んじゃなく、自然と色々な事が浮かんで来て、打ち込んでアレンジして行った感じ。 気が付いたら全部自分でやってた。曲に対して相当思い入れがあったんだろうね。昔 の曲はみんなシンプルなんだよ。でも、Simple Nightって言い方は英語にない言葉ら しいんだけど、何もしなくてよい夜って言うか、そういうイメージ。昔のああいう曲 を聴くのって、夜が良いなって。落ち着いて聴けるって言うか。URUGOMEだったら、 あのサウンドは絶対昼間だろうし、夜でも元気な夜だろうけど、三人でアコースティッ クで作ろうと思うと、夜しか浮かばなかったな。<鳴瀬>」

今回選ばれた、その思い入れある曲について、ナルチョがライナーで綴っている。そ れぞれの曲への思い出話が面白く、読めばアルバムがより楽しくなる事、請け合いの 一文だ。ところで何故、今回はナルチョ、加藤明美、青木タイセイの三人だけで作ら れたのだろう?

「最初はゲスト入れる事も頭にあって、三人は核になるけど、生ギターを入れようと か色々考えてた。でも、やって行くうちにあまり他の色を入れたくなくなって。そこ で三人に絞ろうと決めたんだ。面白いと思うのはベース、歌、トロンボーンっていう 編成だろうね。今迄の俺では考えられない編成。でも、ベストなチョイスだと思った よ。違う楽器だったらこうはならなかった。トロンボーンは男の声の楽器なんだよ。 最近、タイセイとやる様になって、あいつはトロンボーンはやるし、ピアニカとかキー ボードは弾くし、ベースも弾くし、面白いから一緒にやってみようと。明美について は声もあったかいし、すごく良いんだ。60年代の女の人の声って、個性的で、キュー トで、恋心をくすぐる様な、夢がある声なんだよ。今回、色々な歌を歌って貰おうと 思って色々選んだけど、Rodから、Patti PageからAnita BakerからChakaでしょ。彼 女にとっては相当ハードルがあったと思うよ。でも、ちゃんと自分なりの捉え方でやっ てくれて、100%近くこっちの要求に応えてくれた。最初、インストを1/3、ボーカル を2/3くらいって考えてたけど、やって行くうちに自分もベースのバッキングがもっ としたいし、徹底して歌モノをやろうかと。ギターのカッティングが好きみたい。リ ズム・ギターって言葉も好きなんだけど。カッティングだけでリズムを生み出してる のが気持ち良いし、それはベースでも同じ事なんだけど<鳴瀬>」

カシオペアでナルチョを知った人には意外かも知れないが、ナルチョがその音楽生活 で関わった殆どのバンドにはボーカリストが居た。言わば、歌モノを支える演奏活動 を送って来た訳で、そんな歌モノへのこだわりがこのアルバムでは存分に聴く事が出 来る。と言っても決して凝り固まった音ではなく、ある時は小気味良く、不思議で、 かわいらしいかと思うと、時には凄まじく、そしてまたある時には面白く、と曲によっ て表情が様々に変わる。歌モノという制約の中でも端々に感じられる、ナルチョにし か出せない空気感。伝家の宝刀宜しく、ここぞと言うところで現れるそれの、何と格 好良い事か。そんな瞬間に触れた時に思う。大人になるって良いなぁ、なんて素敵な んだろうと。ここ数年、殺伐とした将来に明るさを見出せず、大人になりたくない子 供が増えている。けれど、大人になったらこんなに凄いベースが弾けて、こんなに素 敵なアルバムが作れるかも知れないと知ったら、どう思うだろう?きっと、羨ましく 思うんじゃないだろうか。大人になってみたいと思うんじゃないだろうか。このアル バムにはそう思わせる力がある。そして、アルバム後半に聴かれる、滑らかな山をゆっ くり登って行く様な盛り上がりも楽しい。次はどんな曲なのか、聴き進んで行くのが ワクワクと楽しくなる。例えてみるなら、ちっちゃな幸福感。ちっぽけな、という意 味ではなく、自分だけの幸福感と言おうか。自分の両手でぎゅっと抱えられるだけの、 確かな幸福感。

「そう思って貰えると嬉しいね。それって、このアルバムの俺だよね。好きな曲やっ て、好きに作って。小さいか大きいか判らないけど、俺の幸福感のアルバムじゃない? それを感じてくれたら良いよね。最後の曲、あれはもう寝てるでしょ、みんな(笑)寝 て欲しい曲だし、ぐーぐー寝ちゃってよ。<鳴瀬>」


今日はちょっと良い時間を、ちょっと良い夜を過ごせたなぁ…と毛布にくるまって目 を閉じられそうな、そんな暖かな気持ちになりたい時、このアルバムを聴いてみると 良いかも知れない。
N. Oshima
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