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鳴瀬喜博ソロアルバム「WINDOW」NARU-3 2,500yen (Tax in)
(アルバム解説)
鳴瀬喜博ことナルチョがソロアルバムを出すというニュースを聞いた時、少なからず驚いた。何故なら、あまりにも、本当に、とても久し振りのソロアルバムだからだ。
ナルチョは、1970年代初頭、大学在学中にディスコ・バンドでデビュー。
そして、「カルメン・マキ&OZ」「Smoky Medicine」「金子マリ&BUX BUNNY」などで活躍。
1980年代に入ってからは自身のバンド活動や数々のセッションを行いながら、『MYTHTIQUE』('81)、『BASS BAWL』('82)、『BASE METALS』('83)、『BASS QUAKE』('83)、『STIMULUS』('86)、『うるさくてゴメンねLIVE』('87)、とほぼ毎年の様にソロアルバムを発表。
そして1990年から「CASIOPEA」に加入、日本国内だけでなく、海外も含めた活動を現在も行っている。
それに加えて、2000年にはベーシスト活動三十周年記念ライブをきっかけとして約12年ぶりに「うるさくてゴメンねBAND」が「URUGOME」となって活動を再開するなど、多忙な日々を送り続けているのは周知の通り。
そして、2004年の今年、7枚目となる久々のソロアルバムが発表される。
『WINDOW』
1987年以来、実に17年ぶり。
待ち続けていた窓がようやく開いたという気持ちである。
そんな意気込みのあるアルバムを期待しないでいられるだろうか?
はやる心を抑え、その音が流れ出すのを耳にすると意外な驚きが訪れる。
勿論、いつもナルチョのライブで耳慣れた激しい音もある。
だが、大部分を占めているのは静謐(せいひつ)で、ゆっくりと、でも大きなうねりを持って広がって行く世界だ。
一体、どういう背景で生まれて来た音なのだろう?
「今はやらなくなった自作曲を改めて形にしたいというのがあって。ベースクリニックでそういった曲をやってみて、その感じが強くなっていたところにエレクトリック・アコースティック・ベースを使って演奏したら、ピッタリ来るものがあった。これだと思ったなあ。」(ナルチョ)
そういった色々な要素が揃って、ソロアルバム作りの気持ちが固まったという。
アルバムの端を発したセルフカバー曲からは『Yours Lovingly』『Cool Rain』『Precious Joy』『Life Goes On』の4曲。
今回の為に書き下ろされたのは『Dokokara』『Sketchbook』『Wanna share the night』の3曲。
そして、『Hollow』『Winds』の2曲が今回のアレンジを担当した、福田裕彦氏の作品。
中でも『Winds』は初ソロアルバム『MYTHTIQUE』制作の中心となり、ナルチョのリーダーバンドで福田氏も参加していた「QUIZ」の頃に演奏していた曲で、なんと20年以上前の作品だ。今回、初レコーディングだったという。
それから、「The Three Degrees」の隠れた名曲。『Woman In Love』。
(ボーカルは2000年の三十周年記念ライブで「CHAOS」のボーカリストとして参加した加藤明美さん。)
アルバムは以上のラインナップから成り立っている。
今回のアルバムの聞きどころはレコーディングの中心楽器となったエレアコベース・サウンドだろう。理想の音への基盤を作る大きな役目を担っている。そこから生み出された芯の確かさは、他のどの音もまるで最初からその場所にあったかの様な、そんな自然さを感じさせる仕上がりになっている。
レコーディングは「CASIOPEA」や「URUGOME」などの活動の空き時間を縫う様に行われたという。
と、言っても時間がない中を工面したのではなく、空いている時間があるからやろうかといったスタンスだったそうだ。
「期間を決めるんじゃなく、出来たら出そうかという形で。無理はしない、楽な感じで。」
そう、ちょうど休日に絵を描いたり、プラモデルを作ったりと趣味の続きをする様に、好きな音をゆっくりと愉しみながら、慈しみながら集め、そして作られた曲達なのだ。
「本当にソロアルバムっていう感じの作り方が出来たね。今までの中で一番満足出来てる。」
そういう本人の言葉通り、じっくりと楽しんで作られた空気がそこかしこに感じられる、心地よい音、「豊潤」、もしくは「芳醇」、そんなじんわりとした言葉がとても似合う。
そんな「ナルチョのお楽しみ」として、今回のアルバムではベースプレイ以外での姿を垣間見ることが出来る。
「CASIOPEA」などでも演奏されていたパーカッションプレイ。
「東京音楽大学で生徒と一緒に演奏するときにやったりしるんだけど、好きなんだよね。習いに行きたいと思ってるぐらい(笑)。」
ベースプレイとはまた違ったリズムアプローチを味わえる。
そして、ジャケットやインナースリーブに起用されているイラストレーション、これはなんと、ナルチョ自身の作品だ。
以前から絵を描くのが好きだと語っていたが、正式に描き下ろした作品が発表されるのは今回が初めてではないだろうか。ここ数年ナルチョのライブなどを撮っている写真家・小澤千香子さんの写真から受けるイメージを絵にしたかったという。美しい配色で彩られたイラストレーションにはミュージシャンならではの視点が感じられると思う。出来ればアルバムを聞きながら眺めて楽しんでみて欲しい。
参加ミュージシャンとの共演も充実感に溢れている。
これまでの彼のアルバムでは華やかと言っていいくらいに多彩な参加ミュージシャンを起用していたが、
「今回は人数を少なく、シンプルにしようと思って」
そういう意図から、ミュージシャンそれぞれの持ち味をじっくり味わいながらの演奏となっている。
中でもアレンジを担当した福田氏とは、「QUIZ」の頃にキーボード・プレイヤーで関わった時とは違う、ユニークなアプローチに溢れたアレンジャーとしてのレコーディングを大いに楽しんだという。
「アレンジはすっかり彼に任せちゃってね。映画が好きだから、曲ごとに世界を作り上げたりとか、いろいろ考え方が面白いんだよ」
福田氏のアイデアにはアルバムの曲は生で演奏する曲は生っぽく、打ち込みは打ち込みらしく聞こえる様に、といった意図もあったとか。
練り上げられた世界は様々な音の流れの中から、その流れに抗う事なく、必要な音を拾い上げている。
さて、色々な事を考えさせるアルバムタイトル『WINDOW』。
「朝起きて、窓から光が差してると嬉しいじゃない。そういう気持ちになれるのは窓があるからでしょ?窓からは光も来るし、風も来るし。何より、気持ちも解放されるよね。自分の生活で窓って大切だし、どこへ行ってもまず窓を見るし」
ジャケットのデザインを考えていた時から、窓にベースが立て掛けてある構図が浮かんでいたそうだ。
窓があるからこそ見えるもの、感じられるものがある。
今回、彼が開いた『WINDOW』から静かに流れ出す豊かな音達を楽しんで欲しい。
それは小さな音をも逃がさないという緊張した聞き方でなく、ゆったりと構えて音の鳴りや揺らぎを全身で楽しむといった風に。それがこのアルバムには相応しい様に思う。
「幸せなアルバムだよ。好きな時に好きな事をやれて」
アルバム発表後にはライブやツアーなども計画されているという。
ソロアルバムでのツアーも勿論久し振りの事で、愉しみな限りだ。このアルバムを聴いたのなら、今度はライブでその暖かさに満ちた世界の中に身を遊ばせに出かけて欲しい。
両方を味わってこそ、彼の届けたかったものが見えてくる筈だから。
N. Oshima
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